日本一般用医薬品連合会 - 一般用医薬品業界の連携を強化し、様々な課題について取り組みを進めます。

　日本海側が記録的な大雪に見舞われる一方で、東京は1ヵ月以上も乾燥注意報が続くカラカラ天気の毎日。周囲でも、風邪やインフルエンザにかかる人が増えてきました。
　こんなときは、しっかり食べてたっぷり眠り、外出の際はマスクをし、家に帰れば手洗い・うがいを念入りに行う──なるべく病気を寄せ付けないようにする知恵を、私たちは自然に身につけています。
　それでも風邪をひいてしまったとしたら、早めに薬を飲み、こじらせないうちに治そうとするし、長引きそうなら病院に行く。たいていの病気に当てはまることだと思うのですが、今回見たテレビ広告の中には、そういう観点から首をひねりたくなるようなものがいくつか含まれていました。

　ひとつは、若い女性たちの「なんか最近、肌違うね」「メイク、変えたの？」「いいえ、変えたのは便秘薬」という会話と、それに続く「肌系便秘薬」という表現が“注意”となったCM。「他社誹謗的」「効果と安全性の保証的表現」との理由からですが、私はそれ以前の問題として、「便秘なら薬を飲めばいい」という安易な考え方を助長するような作り方に違和感を覚えました。肌が荒れるほどの便秘（あるいは、便秘でかつ肌荒れもひどい）であれば、それは、食生活や運動といった日常生活にも問題があるはずです。その根本を改善せずに、単にメイクを変えるような美容的なアプローチで、本当に問題は解決するのでしょうか？
　もうひとつ、審査会の席上では取り上げられなかったのですが、個人的に気になっているのが「顔色やば」「顔色は内側からケア」と謳う内服錠。ホームページを見ると、「疲れ顔に着目した」とあり、効能は「血色不良や冷え性、肉体疲労に悩む人の滋養強壮」で「顔色が悪いなど、体の疲れが顔に出てしまっている人の医薬品」というものです。
　私自身、生活が不規則になりやすい仕事で、慢性的に睡眠不足なので、生活を改善すると言っても実際には難しいということもわかります。でも、「体の疲れが顔に出る」のは、本来、体からのSOSですよね。
　それに言及しないまま、まるで化粧品のような医薬品名を付けてしまう──あくまでも私見ではありますけれど、どこか違う気がしてなりません。

　某携帯電話会社のCMで、初めて犬のお父さんを見たときは、ほとんどの人がびっくりし、笑ったと思います。それが、何度も見るうちに、美男美女家族の中で父親だけが犬、という絵柄に慣れ、次はどんなストーリーかと期待するようになる。常識を破ったクリエイターの手腕でしょう。
　多分、医薬品に関しても、何とか新しい切り口で製品の良さを伝えられないか、宣伝担当の皆様は苦労しておられるに違いありません。しかし、これまでもしばしば申し上げてきたことではありますが、こと医薬品に関して、このような斬新さが時に本末転倒になりかねないことを、今一度、認識する必要があると考えます。
　「薬も過ぎれば毒となる」「薬より養生」「合わぬ薬湯、水にも劣る」「薬多なれば病甚だし」などの諺で、先人たちも使い方を戒めてきたのですから。

　派手なキャッチコピーや過剰なCGがあふれるなかで、「お風邪ですか。カウンターで薬剤師にご相談ください。あなたの症状に合ったお薬をお探しします。まずは風邪薬を飲んで様子を見てください」という、素朴とも言える感冒薬のCMが、最も心に残った審査会でした。

以上